§1 職業活動
(1) 医師は個人および国民全体の健康に奉仕する。医業は営業ではない。医業はその本質からみて自由業である。医師の職業は、医師が自己の良心と医師の道徳の掟に従ってその使命を果すことを要求している。【訳者注:自由業】
(2) 医師の使命は生命を維持し、健康を守り回復させ、並びに苦痛を和らげることにある。医師は人間性の掟に従って職務を行う。医師はその使命と相容れない、または従うことに責任をとれないような主義を認めてはならないし、そのような規定や指示に従ってはならない。
(3) 医師はその職務を良心的に行い、職務に関連して寄せられる信頼に応えなければならない。
(4) 医師は、人体の臨床実験、または個人データに関係した疫学的研究を行なう前に、計画に関連した職業倫理的及び職業規則的問題について、医師会または医学部に設けられている倫理委員会に審議を求めなければならない。
(5) 研究の目的で人間の胚を作ること、並びに胚への遺伝子導入及び人間の胚及び全型発育能の細胞での実験は禁じられている。女性臓器へ移植する前に、胚について診断を行なうことは禁じられている;胚保護法§3 での性と関連する重大な疾患を排除するための手段の時は別である。医師は、生きている配偶子と生きている胚組織を用いた実験をする前に、計画に関連した職業倫理的及び職業規則的問題について、医師会または医学部に設けられている倫理委員会に審議を求めなければならない。
(6) (4) 及び (5) による審議を行なう場合に、1975年(東京)、1983年(ヴェニス)及び1989年(香港)で改訂版された1964年(ヘルシンキ)の世界医師会宣言を基礎に置く。
(7) 医師は、職業活動に適用される規則を知り、遵守する義務がある。
(8) 医師は場所を移しながら医業を行ってはならない。医師は個人に対する医学的相談あるいは治療を手紙、新聞や雑誌、テレビやラジオを通じて行ってはならない。
(9) 医師はその職業を行う場合自由である。医師は自分と患者との間に必要な信頼関係が存在しないと確信したときなどには、診療を拒否することができる。救急の場合に救助するという義務はこれに該当しない。
(10)
医師は原則として同じ専門科の医師だけに代理をさせるべきである。
§2 説明の義務1)
医師は患者の自己決定権を尊重しなければならない。医師は処置に当って患者の同意を必要とする。同意は基本的には個人的会話による説明が前提となる。
§3 守秘義務
(1) 医師は、医師の資格で委ねられたり、知らされた事柄について秘密を守らなければならない。これには患者の書面による報告、患者に関する記録、X線写真、その他の検査所見も含まれる。
(2) 医師は自分の家族に対しても守秘義務を守らなければならない。
(3) 医師は、その補助者、および医療業務に従事するための見習者に対して秘密保持の法的義務を教え、これを文書として残しておかなければならない。
(4) 医師が守秘義務から解かれたとき、または公表することがより高い法益を守るために必要とされる場合には、秘密を明らかにする権限が与えられる。法的な証言−及び届出義務は関係がない。
(5) 医師が第三者から公的または私的に委託されて従事する場合、医師によって確認された事項がどの範囲で第三者に報告されることになっているかについて、被験者が検査や処置を受ける前に知らなかったり、知らされていなかった場合には、医師には守秘義務がある。
(6) 数名の医師が同時または相次いで同一患者を診察または処置した場合には、患者の同意が得られれば、医師たち相互の間に秘密保持の義務はない。
(7) 科学的研究および教育の目的のためには、患者の匿名が確保されるか、またはこのことが明白に同意された場合に限り、守秘義務に該当する事実や所見を発表して差し支えない。2)
§4 医師の共同作業
(1) 医師は、同じ患者を同時または前後して診察または治療する医師と、同僚として共同作業をする義務がある。
(2) 医師は、自分の医師としての知識からそのように感じ、患者がそれを了解するかまたは了解が得られたと受け取れた時には、他の医師に意見を求めたり、患者を他の医師に回す義務がある。診療している医師は、他の医師の意見を求めてほしい、または他の医師に回してもらいたいという患者またはその家族の願いを原則として拒否すべきではない。
(3) 医師は、患者が承諾すれば、処置前、処置中、または処置後の医師に、依頼があれば得られている所見を渡し、それまでの処置を知らさなければならない。専門医への紹介、病院への紹介及び病院からの退院の時には、はっきりとした依頼がなくてもこれは適用される。オリジナルの書類は返却するものとする。
§5 卒後研修の義務
卒後研修をする権利を与えられた医師は、医師の協力者という与えられた機会【身分】の枠内で、その義務を損うことなく、卒後研修規則に従って選択した卒後研修課程において、卒後研修をすることに努めななければならない。
§6 未出生の生命の維持
医師は未出生の生命を維持することを原則として義務づけられている。妊娠中絶は法律の定めるところによる。医師に妊娠中絶を強制することはできない。
§7 死んだ胎児の保護
妊娠中絶を実施または流産を扱った医師は、死んだ胎児が決して誤った利用をされないように注意を払わなければならない。
§8 避妊手術
避妊手術は医学的、遺伝学的または社会的理由により許される。
§9 人工受精、胚移植
(1) 母体外での卵細胞の人工受精とそれに引き続く子宮内への胚の移植、または配偶子あるいは胚を遺伝学的に母親である者の卵管に入れることは、不妊治療の方法として医師の業務であるが、医師会がこの職業規則の構成要素としている指針の枠内においてのみ許可される。
(2) この方法を実施しようとし、それに包括責任を有する医師は、その計画を医師会に届け出て、職業法規上の条件を満たしていることを証明しなければならない。
(3) 医師に対して、人工受精または胚移植に協力することを義務づけることはできない。
§10 生涯研修
(1) 職業に従事する医師には、職業上の生涯研修を行ない、そのさいに職業を行なうに当って適用される規則を知る義務がある。
(2) 生涯研修に適した方法は以下の通りである:
a) 一般的または特別な生涯研修行事に参加する(コングレス、セミナー、訓練グループ、講習、コロキウム)、
b) 臨床生涯教育(講義、見学、展示及び訓練)、
c) 専門文献の学習、
d) 視聴覚教材の利用。
(3) 医師は上に示した生涯研修の機会の範囲で、自分の職業を行なうために必要な専門知識の維持と発展に必要とされるものを利用しなければならない。
(4) 医師は医師会に対して、(1)から(3)までに相当する生涯研修を適当な形で証明できなければならない。
§11 質の確保
医師には、医師の業務の質を確保するために、医師会によって導入された方法を実施する義務がある。
§12 賠償責任保険
医師は、職業上の業務の枠内で、賠償責任請求に対して十分に保険をかける義務がある。
§13 診療の実施
(1) 病院(認可された私的病院を含む)以外で外来診療の医師業務を行なうことは、法律による別途の許可がなければ、自分の診療所で開業するということになる。
(2) 開業は§34 に該当する診療看板によって公示することができる。その場合医師は、診療所の場所と専門事項並びに時間を確定し、診療看板に診療時間を示す義務がある。
(3) 医師は複数の場所において診療時間を設けることは許されない。医師会は、住民の医療給付を確保するために必要な場合には、支所診療所(診療時間)の許可を与えることができる。
(4) 医師は、開業の場所と時、並びに総ての変更を遅滞なく医師会に報告しなければならない。
§14 契約
(1) この職業規則の原則が守られるならば、医師によって雇用契約が締結されてもよい。契約は、医師が医師業務において、非医師による指揮を受けないことをとくに保証しなければならない。医師による指揮権限が医師に対して存在する場合に、指揮を受ける医師はそれによって医師としての責任が免除されることはない。
(2) 職業上の利益が守られるかどうかを審査できるようにするために、医師は、医師業務に関するすべての契約を、その締結の前に医師会に提出しなければならない。
§15 医師の記録
(1) 医師は、職業実施のさいに確認されたこと及び行った処置について必要な記録を作成しなければならない。医師の記録は医師のための単なる備忘録ではなく、規定に従った記録作成によって患者の利益にも役立つ。
(2) 他の法律規定によってそれより長期の保存義務が存在しなければ、医師の記録は診療終了後10年間は保存される。医師の経験から必要なときは、それより長期の保存も必要である。
(3) §3 の原則によって許される医師の記録、カルテ、剖検記録、X線写真及び他の検査所見の引渡しは、報告書または意見書(鑑定書)の作成に関連して、これらの資料を理解することが必要である場合に、これを行う非医師の職または診療に係わらなかった医師に対してもなされるものとする。
(4) 医師はその診療記録や検査所見が、診療を止めたあと管轄の監督に移管されるように心を配らなければならない。診療所の閉鎖または診療所の委譲に当って、患者に関する医師の記録を監督するために渡された医師は、これらの記録を鍵をかけて保管し、患者の同意を得たときにのみ目を通すか、または譲り渡すことができる。
(5) 電算機記憶媒体または他の記憶媒体による (1)の意味での記録は、その変更、消去または非合法的使用を防ぐために、特別な保管及び保護の処置を必要とする。
§16 意見書及び証明書の作成
1医師としての意見書(鑑定書)および証明書を作成する場合には、医師は必要な注意を払い、良心に従って医師としての自分の確信を表明しなければならない。文書の目的およびその受領者を明記しなければならない。医師が作成を義務づけられている、または作成を引受けた意見書と証明書は、適切な期限内に提出されなければならない。
協力者及び卒後研修中の医師を評価する証明書は、申請または転出後3ヵ月の期限を超えてはならない。
§17 協力者の教育
医師は、協力者の教育にさいして、職業教育のための法的規定に注意を払わなければならない。
§18 医師の報酬
(1) 医師の報酬請求は適切でなければならない。算定に当っては医師報酬規則【連邦法】が根拠となる。そのさいに医師は、個々のケースの特別な事情、とくに給付の難易度、時間の消費を衡平な裁量で考慮しなければならない。その場合、医師は不当な方法によって通常の金額より低くしてはならない。報酬協定を結ぶさいに、医師は支払義務者の収入及び経済状態を考慮しなければならない。
【公的医療保険の報酬は医師報酬規則で定められているので、この条文の規定は自由診療の場合に適用される。】
(2) 医師は親戚、同僚、その家族および資力のない患者からの報酬を全額または部分的に免除することができる。
(3) 医師は報酬請求を通常少なくとも四半期ごとに行うものとし、審査を可能にするために、記録に基づいて分類するものとする。
(4) 医師は、官庁の委任または医師会の承諾があった場合にのみ、他の医師の報酬請求の妥当性について鑑定をすることができる。
§19 同僚関係
(1) 1医師は相互に同僚としての、また思いやりのある態度をとらなければならない。 2§16 1 項による医師の義務は、意見書並びに他の医師の診療方法に関しても、良心をもって医師としての確信を表明するのであれば、これに抵触しない。
3他の医師の診療方法または職業上の良心について、事実に基づかない批判をすること、並びにその人物をけなす発言は、職業倫理に反することである。
4同僚を不正な行為で、その診療業務から、または競争者として排除することは職業倫理に反することである。
5「実地修練医【医師免許取得前の修練、すなわち卒後の初期研修を行なう者】」、保険医業務をするのに必要な研修期間を修了するための助手医師または代理医、または卒後研修の助手医師が、それを行った診療所所有者の同意なくして、そこで少なくとも3ヵ月行なった業務と同じ標榜の診療所を、その居住圏内において、2年以内に開業することは、特に職業倫理に反することである。
6医師は、職場を求めている同僚(特に卒後研修中)の苦境を、適用される労働契約や他の法規範をごまかしたり違反して職場提供する(例えば客員医師契約の濫用)ことによって、利用してはならない。 7同じことは、数名の医師を排除競争の中に引き込んで、雇用関係を提供または促進することにも適用される。3)
(2) 医師の業務のために他の医師を患者のところに呼んだ医師は、その医師が支払いを請求した場合にのみ、この医師に相応の支払いをする義務がある。
(3) 患者および医師でないものがいるところでは、医療行為に対する異議及び叱責するような教訓はやめるべきである。このことは上役及び部下としての医師、及び病院勤務の場合にも適用される。
(4) 医師にかかっている労働能力のない患者を、他の医師が労働能力について再検査することは、主治医の了解を得たときにのみ可能である。社会保障、または公衆衛生機関の任務の中の健康保険審査医業務の規定は、これに抵触しない。
§20 他の医師の患者の診療
(1) 医師はその診療時間内にすべての患者を診療することができる。他の医師の治療を受けている患者から請求されたときは、医師は、患者またはその家族から、前にかかった医師に、そのことを伝えるようにさせなければならない。
(2) すでにかかっている医師に連絡が取れない状況にある患者のところに救急で呼出された医師は、救急処置の終った後可及的速やかに、もとの医師に報告し、その後の処置を任せなければならない。
(3) 病院での治療が終ったあと、患者は入院が指示される前に治療に当っていた医師に戻されるべきである。外来治療または監視への再予約は、患者の診療を受け持っている医師の同意があるときにだけ許される。
(4) 医師は他の医師から頼まれた援助を、止むを得ない理由がない限り断ってはならない。
(5) 医師は、他の医師から送られた患者が、同人の治療業務終了後も引続いて処置を必要とするときは、再び戻さなければならない。
(6) 対診の場合、関与した医師たちは患者や家族のいる前で相談してはならない。医師たちは、誰が対診の結果を伝えるかについて、意見を一致させるものとする。
§21 代理医と医師の協力者
(1) 医師は自分の診療を自ら行わなければならない。
(2) 医師たちは基本的に、相互の代理をすることを心掛けるべきである;引受けた患者は、代理が終ったら戻されなければならない。
(3) 代理を必要とする支障が合計で3ヵ月以上12ヵ月以内に及ぶ場合には、代理人が診療に従事することを医師会に届け出るものとする。
(4) 代理を依頼しようとする医師は、代理人の人物が規則で定められた代理に関する条件を満たしていることを確認しなければならない。
(5) 死亡した医師の診療は、未亡人または扶養を受ける権利のある親族のために、通常は歴年の四半期の終了後3ヵ月の間は、他の医師によって継続することができる。
(6)
医師の協力者【この医師の下で職業教育を受ける者】の業務は、開業医による診療指導が前提となる。これは医師会に届け出るものとする。
§22 報酬による紹介の禁止
医師には、患者または検査材料を紹介することによって報酬その他の便宜を約束または供与させたり、または自ら約束または供与することは許されていない。
§23 医師業務の共同実施
医業の共同実施、診療場所、診断及び治療の設備を共同で使用するための医師たちの提携は、医師会に届け出るものとする。
共同での医業の実施の場合、【患者が】医師を自由に選択できることが保証されていなければならない。
§24 医師の救急業務
(1) 開業医は救急業務に参加する義務がある。医師は、重大な理由のある場合には、申請によって救急業務から全部、部分的または一時的に免除され得る。これがとくに適用されるのは:
− 身体的障害のためそれができない状態にある、
− 特別に負担のかかる家庭的義務により参加が要求できない、
− 救急サービスをともなった臨床待機業務へ参加すること;
− 女医の場合には出産の少なくとも3ヵ月前と少なくとも6ヵ月後
(2) 個々の救急業務の制度と実施については、医師会の発行した指針4)によって決定される。救急業務参加の義務は、定められた救急業務地域に適用される。
(3) 救急業務制度は、現に診療に当っている患者のために、その病状が必要としているケアーを担当するという義務から、医師を免除するものではない。
(4) 医師は、(1) により救急業務参加から免除されない間は、救急業務のための生涯研修もしなければならない。§10 が準用される。
§25 宣伝と推奨5)
(1) 医師には、自分のため、または他の医師のためのいかなる宣伝も禁じられている。医師は禁じられている宣伝を他人によってさせたり、これを容認したりしてはいけない。このことは、サナトリウム、病院、機関または他の事業における案内書の中で、医師の個人または業務が推奨されるような形で取り上げられることにも適用される。
(2) 医師は、同人の医師業務に関して宣伝的性格を有する報道及び写真報道が、同人の名前、写真または住所を使用して公表されることを容認してはならない。
§26 医師間の情報
医師は自分が業務上供給できるものを他の医師に伝えてよい。この情報提供は、地理的に見て開業場所を取り巻く相応の地域に限定され、自分が業務上供給を用意しているもの及び業務上供給しているものについての知らせに限定されなければならない。情報は、権威のある卒後研修規則によって習得したが、標榜は許されていない資格(自由選択卒後研修、専門分域)の通知に及んでも宜しい。情報提供の場合に、自分の業務の宣伝的な強調はいずれも禁じられている。
§27 社会での職業的活動
医師の発表や協力が客観的な情報に限定され、個人並びに医師の行動が宣伝的に強調されないのであれば、新聞、ラジオ、テレビにおける医学的内容の発表または医師の協力は許される。その場合医師は、責任を自覚した客観性を持つ義務がある。同じことが医学的内容の一般への講演にも適用される。
§28 患者への情報提供
医学的内容の客観的情報及び患者治療のための組織作りの示唆のようなものは、医師やその能力を宣伝的に強調するのでなければ、医師の診療所内で患者に教えて差支えない。
§29 医師と非医師
(1) 医師は、医師でない者、及び職業的に従事する協力者に属しない者と一緒に診断または治療を行なってはならない。医師は、このような者を見物人として医師の仕事の場に立入らせてはならない。医師の職または医療補助者の職につくための教育を受けている者はこれに該当しない。患者の近親者及び他の者は、医学的根拠があり、患者が同意するときには、同席しても構わない。
(2) 医師が患者の治療効果の目的で、医療技術の慣例により、非医師との協力が必要と考えられ、医師と非医師の責任範囲が明確に分かれているときは、(1) の意味での不許可の共同作業とはならない。
(3) 医師は非医師に代理をさせてはならないし、非医師に自分の名前で患者の治療または検査をさせてはならない。
§30 医薬品、療法及び補装具の処方と推奨
(1) 医薬品、療法及び補装具の処方に対して、製造者または販売者から報酬またはその他の経済的便宜を請求したり、または受領することは、医師には許されていない。
(2) 医師は医療用商品見本を有償で他に回してはならない。
(3) 医師はその処方箋の濫用を助長してはならない。
(4) 医師は患者に、しかるべき理由なくして、特定の薬局または商店を指示してはならないし、また医薬品、療法及び補装具を仮名や明らかでない記号で処方することを、薬局や商店と協定してはならない。医師は医薬品、療法及び補装具の処方にさいして、客観的に示せる理由なしには特定の製造者の製品を指名すべきではない。
(5) 医師は治療法詐欺への戦いに協力すべきである。
(6) 産業において医師科学者として協力している者の業務は、医薬品、療法及び補装具の作用と使用方法に関する医師への専門的情報提供に限定すべきである。このような医師には、薬局、販売人または他の非医師の下で注文のために宣伝することは許されない。
(7) 医師には、自分の処方業務から判明した好ましくない医薬品の作用をドイツ医師会医薬品委員会に報告する義務がある。
§31 医薬品、療法及び補装具についての鑑定
(1) 医薬品、療法及び補装具、身体介護器具または類似の商品に関して宣伝講演をすること、宣伝に利用されるかもしれない意見書または証明書を出すことは、医師には許されていない。医師は、自分の意見書及び証明書がそのように利用されることを、受領者に対して明確に禁止しなければならない。
(2) 医師には、医師の職業上の肩書を付した自分の名前を不正な方法で宣伝の目的のために、例えば会社名または医薬品の表示に提供することが禁じられている。
§32 医師と産業
(1) 医師が医薬品、治療器具、補装具または医療機器の製造者のために仕事を行なった場合(例えば、開発、治験及び鑑定)、このために定められる報酬は相応の範囲を超えてはならず、また行なった仕事に相当するものでなければならない。
(2) 医師には、そのような製造者からのあらゆる種類の宣伝用贈物を受け取ることは禁じられている。これは僅かな価値の物に対しては適用されない。
(3) そのような製造者の情報提供の行事のさいには、ただ情報交換が主体であって、もてなしのために不相応な費用及びこれに相当する便宜(例えば旅行費用)が提供されないように、医師は注意をしなければならない。
§33 公示と名簿
(1) 開業または認可についての日刊新聞での公示は、診療所のアドレスの他に、医師の看板に認められた事項だけを含み、開業または保険診療採用後の3ヵ月以内に、同じ新聞に3回だけ公示することができる。開業及び認可に関するそれ以外の公示は禁止されている。
(2) その他として、診療所閉鎖、診療所引渡し、診療所からの長期不在または病気、並びに診療所移転及び診療時間または電話番号の変更の場合にのみ、日刊新聞に公示することが許される。このような公示は最高2回まで出してよい。
(3) 新聞公示の形式と内容は、その地方の慣習に従わなければならない。
(4) 医師は、以下の条件に適合するなら、公的に定められた情報媒体に登録して差支えない。
1. それは、総ての医師に対して同じ条件で、同じように無償の登録を提供していなければならない;
2. 登録は公示できる標榜に限定されていなければならない(§34);
3. リストまたは医師の登録に予定した箇所には、医師だけを掲載しなければならない。
これらの条件に相当しないリストの作成に医師は協力してはならない。
§34 診療看板
(1) 医師は診療看板に名前と医師の称号、または卒後研修規則によって標榜を許された称号を表示し(専門医称号、重点領域称号または付加称号)、診療時間を公示しなければならない。取得した専門医称号、重点領域称号及び付加称号は、卒後研修規則によって許可された形式であること、そして医師が該当する専門医領域、重点領域または特殊領域で従事するときにのみ標榜することができる。
(2) 患者に直接関係する業務に従事しない医師は、医師会に通知すれば、診療看板による開業の公示をしなくてもよい。
(3) 看板には、(1) による表示の他に、医学のアカデミックな学位、医師の肩書、自宅及びその電話番号を含めてよい。他のアカデミックな学位は、学部名と結びついたものだけを示してよい。
(4) 以下の表示は、条件が存在するならば、診療看板に示してよい:
a) 保険医認可
b) 一期間だけの医師
(5) 1「Professor 」の称号は、それが医学部が提起し、該当する州の省によって授与されたものであれば、標榜してよい。 2外国の大学の医学部から授与された称号は、医師会の判断によってドイツの「Professor」の称号と同等である場合には、同様に適用される。
(6) (5) 2項によって標榜できる外国で取得した称号は、外国の授与証書版に掲載されている。
(7) 共同診療で従事している医師は、「共同診療」と付け加えて表示しなければならない。
(8) その他の付加表示は禁止されている。
§35 看板の設置
(1) 診療看板は、医師の診療を住民に伝えるものでなければならない。それはどぎつい体裁で設置されてはならないし、通常の寸法(約35×50p)を超えてはならない。
(2) 特別な事情がある場合、例えば診療所入口が隠れた場所にあるときは、医師は医師会の同意を得て更に医師看板を設置することができる。
(3) 診療所移転のさいは、医師はその旨を記した看板を半年の期間まで元の家屋に設置することができる。
(4) 医師は必要な場合には、医師会の承認を得て、開業の住所にはなく、専ら特殊な検査または治療目的に使用する(例えば手術)診療場所を、指示看板で表示することができるが、それには名前、医師称号及び「検査場所」または「治療場所」の指示を、他に何も付け加えずに示してよい。
§36 便箋、処方箋用紙、スタンプ及びその他の文書往復の記載
便箋、処方箋用紙、名刺及びスタンプ並びにその他の文書往復の記載には§34が準用される。医師の職務名称は文書往復において示して差支えない;卒後研修規則によって業務場所でのみ標榜できる称号にも同様に適用される。
§37 ヨーロッパ共同体の域内での自由な職務遂行の交流
この職業規則は、ヨーロッパ共同体の他の加盟国の国籍を所有し、この職業規則の適用地域において一時的に職務を行なう医師にも適用される。
§38 移行規定
この改訂の発効のさいに「Professor」の称号を標榜する者は、その称号がドイツの官庁から授与されたものであれば、引き続いて標榜できる。外国で取得した「Professor」の称号に対しては、§34 (5) に該当する規定が、この規則の発効の前に標榜されていた称号にも適用される。